三度目のブルキナ

半年ぶり、三度目のブルキナファソとなった。
修士論文の調査のために一ヶ月半の滞在だ。


同じ国に三回も行くと幼なじみに会うような気分になって、
こんなにちっぽけで茶色い街だったかな、とか
ここは変わった、これは相変わらずだ、とか思ってとてもおもしろい。


タクシーの料金が200フラン(40円)から300フランに値上がりした他は私にとっての大きな変化は
ドイツ料理のレストラン、Tam Tamがなくなってしまったことくらいだろうか。


到着してその日から自転車で動き回れるし、
調査にしても誰にどこまで頼めるかがなんとなくわかるので
そこまでたらい回しにされずに済んでいる。


夏休み中の大学生の友達にバイクを出してもらってあちこち行ったり、
ちょっと偉い人に会いたいときは教育省の知り合いに頼んでいっしょに行ってもらったり、
嫌な顔せずに助けてくれる人たちがいて本当にありがたい。


「論文の調査のためだったらデータを渡す必要はない」と言われたり
「データがほしいならお金を払え」と言われたり、
連絡もなしに予定をキャンセルされたり、雨が降って人が来なかったり、
ある程度の苦労はあるけど想定内のもので特に驚きもなく、まあまあ上手くいっている。


自転車をこいでいて涼しい風を感じたとき、
道ばたで知らない人に「こんばんは」とあいさつされるとき、
汚いバーでビールと肉を片手におしゃべりするとき、
羊の群れとすれ違うとき、
ブルキナが好きだなぁと感じる。

À paradis

ラマダン中、なぜラマダンをするのかについて友人と話している内に宗教の話になった。


私「ラマダンは自分のためにするの?それとも神様のためにするの?」

友人「ラマダンをすると、自分がしてきた罪を許してもらえたり、
    願いを聞き入れてもらえたりするんだ。たとえば人を殺してしまっても、ラマダンをすればゆるして・・・」

私「もらえないでしょ」

友人「笑・・・でも罪を犯したまま死ぬと天国に行けない。天国は信じてるでしょう?」

私「いや、信じてないよ」

友人「なぜ?死者をみたことある?」

私「うーん、ある」

友人「それは死体を見たのであって、死者は誰にも見ることができないんだ。
    たとえば稲を刈るというのは殺してるようなものなんだけど、米を植えたらまた生えてくるでしょう」

私「いや、種だし、生えるし」

友人「でしょう(強引に)。人間の魂も死んだら違う生を授かるんだ」

私「違う生を授かったら前のことは覚えてないからどうでもいいんじゃない?」

友人「たしかに・・・でも存在しないものに名前はないよ。天国は存在するから名前があるんだ」

私「そうかなー『ゼロ』とか『無』みたいなもんじゃないの?」

友人「ほらね(誤解)。存在するから名前があるんだ」

私「(まいっか。) 天国はどんなところ?」

友人「天国はすべての良いものが集まってて、地獄にはすべての悪いものが集まってるんだ」

私「たとえば?何があってほしい?」

友人「暑すぎず、寒すぎず、すべてのおいしいものがあって・・・
    スパゲティ、オイルサーディン(彼の好物らしい)・・・」

私「じゃあこの部屋クーラー効いてるし、天国に遠くないんだ(笑)」

友人「スパゲティとオイルサーディンがあればね!」

私「天国には動物がいる?」

友人「動物は深く考えないし、本能で生きてるから、罪を犯したとしてもみんな天国にいくんだ」

私「じゃあにょっきにも逢えるんだ」(にょっきはブルキナで飼っていた犬。突然死んでしまった。)

友人「まだ忘れてないのか。とにかく僕たちもみんなまた天国で逢えるよ」


これまで私は、死んだら終わりで魂なんてない、天国も地獄も関係ない、と思ってきた。


飼っていた犬や猫との別れくらいしか経験していないからこんなのんきな死生観なのかもしれないけど、
彼らにまた会えるとしたらすごく嬉しいし、もう一生会えないかもしれないブルキナ人や亡くなった人とも
「さようなら」じゃなくて「またね」でお別れできるならそんなに悲しくないのかな、そうでもないかな。


「じゃあ、また天国で。その前にも会えるといいね。」
この友人とはそう言って笑ってお別れできそうな気がする。

フランス大統領選

4月22日はフランス大統領選の第1回投票の日です。


候補者10人のうち、有力候補はフランソワ・オランド候補と現大統領のニコラ・サルコジ。
これまでオランド候補が優勢とみられていましたが最新の調査ではほぼ同じ支持率で、
5月6日の決選投票のカードはこの2人だといわれています。


最大野党で左派の社会党オランド氏は、これまで41%が上限だった富裕層への所得税の課税から、
新たに年収約1億800万円以上を対象した75%という最高税率を設ける方針を打ち出しています。
一方右派のサルコジ氏はあらゆる所得層が対象となる付加価値税(消費税)を
19.6%から21.2%に引き上げる考えを表明しています。


http://www.tv5.org/TV5Site/7-jours/sequence.php?id_dossier=386&id_seq=898&num=1


この動画はフランス語のレッスンでぜんっぜん聞きとれなくて、
周りのメンバーがディスカッションしてるのに入っていけずへこんだのですが、
よくよく単語を調べたりしてみるとだいたいこういうことを言っているようです。


ドイツのメルケル首相がサルコジ大統領の支持を明確に表明したが、
両者の間で会合がもたれたりはしておらず、沈黙が続いている。
ドイツ左派は社会党オランド候補の支持を決めたが、
オランド氏が表明した欧州憲法(?traité européen)の見直しに対し懸念を表している。


イギリスのファイナンシャル・タイムズ紙は
富裕層への75%の所得税を打ち出したオランド氏を「マルクス主義者」と断定し、
左派のガーディアン紙はオランド氏を支持しながらもサルコジ氏の動静に注目している。
タイムズ紙はフランスの市民がこうも早く現職大統領を追放したがっていることに驚きを示し、
「フランスは終わりのない革命を続ける君主制国家のようだ」と述べている。


ポピュリズムの強いイタリアではサルコジ氏に加え、
3番目の有力候補、極右のマリーヌ・ル・ペン候補が人気で
親しみをこめて「マリーヌ」とファーストネームで呼んでいる人が多い。


アメリカでは仏大統領選にあまり関心が高くないが、
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「ニコラ・ル・ペン」というタイトル
(サルコジ氏が移民半減を打ち出すなど、より右寄りに政策転換したことを示唆している)の記事を掲載したり
オランド氏とサルコジ氏の対決という特集で1紙面割いたりしている。


ちなみに原発についてはサルコジ氏は原発政策の維持を公約しており、
オランド氏は当初脱原発を表明しましたが今は撤回し、
原発は主要争点から追いやられています。


日本ではあまり語られることのないフランス大統領選ですが、
オランド氏とサルコジ氏、どちらが当選するか、
その後の政策がどうなっていくのか注目です。

How do you measure 2 years?

映画『RENT』の冒頭で印象的な歌がある。http://www.youtube.com/watch?v=x8iTeDl_Wug


"Seasons of love"
Five hundred twenty-five thousand six hundred minutes
How do you measure, measure a year?

In daylights, in sunsets, in midnight, in cups of coffee, in inches, in miles, in laughter and strife..
In five hundreds twenty-five thousand six hundred minutes

How do you measure a year in the life?
How about love....?
Measure in love....
Seasons of love....


52万5600分
1年という長さをどうやってはかろう?
陽の光、夕暮れ、真夜中の数、朝のコーヒー…
それともインチやマイル?
笑った数?喧嘩した数?


52万5600分(=1年)
毎日の生活の中で1年をどうやってはかろう?
じゃあ、愛ではかってみたら?
愛で1年の長さをはかってみたら…





ブルキナで過ごした2年という期間はどうやってはかろうか?



洗濯ばさみ、日本では一度買えば大分長く使えるけど
ブルキナのものは強くつまむとすぐに割れるので使い捨てに近い。
もともとついていた洗濯ばさみはとっくに壊れてなくなり、
最後に輪っかの部分まで割れた。




オフィスの隣で長らく建設中だったが、
きれいに塗装されて完成し、なんとベネトンが入った。



友達の赤ちゃんがお腹の中にいるとき


生まれて数時間


1歳半





黒猫のももちゃん



ガードマンがもらってきたにょっき

右はふでばこ




こんなに大きくなった



12月、寒いのでくっついて寝る2匹。2匹とも悲しい別れをすることになった。


ブルキナで起こった様々な出来事は書ききれない。
ブルキナ人や日本人の友達ができたこと、
好きな人ができたり、別れたりしたこと、
上司とけんかしたこと、
フランス語やギターが上達したこと、
7キロくらいやせたこと、
たくさんの人に支えられ、
よかったことも、つらかったことも私のかけがえのない財産になっていて、
笑顔の数でも涙の数でもこの2年をはかることはできない。



帰国して大学院のゼミに行くと新入生がオリエンテーションを受けていて、
話してみるとちょうど3年前の自分と同じような期待と不安、悩みを抱えていた。
ブルキナに行く前の自分からどれくらい成長しているか、
2年間の経験をこれからの自分に活かしていくことでその価値はどんどん大きくなる。



「ただ、前へ」
尊敬する人からもらった言葉をもう一度思い出して前に進みたい。
ブルキナの2年間がもつ意味は振り返ったときにわかるはずだ。

手紙

ご無沙汰しております。いつも応援してくださってありがとうございます。
お忙しい日が続いていると思いますが体調などは崩されていないでしょうか。
私はブルキナファソでの任期が終わり、パリの空港にいます。


パリの空はどんよりしていて気温は5度です。
空港内でも寒くて仕方がないので温かいスープを飲んでいます。
免税店には美しくて高価なものばかりが並び、見渡すと白人ばかりで
わずか6時間の距離とは思えない別世界にすぐに順応している自分に違和感を覚えます。



ブルキナでは本格的な暑さが始まって毎日40度を超す中、
自転車であちこち走り回り、日本に帰る準備に追われていました。
本当に厳しい暑さなのですが、マンゴーが安くておいしい時期でもあるので
一人で丸ごと1個、2個と贅沢にたくさん食べました。



ブルキナでの最終日はバタバタで寂しいと思う暇もなく空港に向かった気がします。
空港にはお世話になった人たちが来てくれていて、
配属先のマダムたち、友人たち、ガードマンの家族、
一人一人とあいさつをしていたところにカウンターパート(配属先の同僚)が来て、
本当に迷惑をかけっぱなしだったのに嫌な顔一つせずに助けてくれた彼が一言
「もう行ってしまうのか」と言った途端、涙があふれてきました。
マダムたちも「また必ず戻って来なさいよ。みんなあなたのことが大好きだから」と言ってくれ、
これまで忙しさの中で向き合っていなかった感情が一気に押し寄せてきた気がしました。



ブルキナでの活動は楽しいことばかりではなくて、
大変なことも、腹の立つことも、つらいこともたくさんありました。
二年の任期を無事に終えられたのは周りのおかげだと思います。
与えたものよりも与えられたものの方がはるかに多い二年間でした。
これがスタートだと思って、この経験を活用していくことで恩返しをしていきたいです。



日本はどれくらい寒いのかわかりませんがお体には十分ご留意ください。



まりこ

2012年3月22日 パリにて

カルナバル

夜、重たい暗闇と静寂が村を押し包む。


緊張感を破るのはニワトリで、トランペットさながらに鬨の声を張り上げる。
あちらこちらでニワトリの声がつながり、ファンファーレはにぎやかになってゆく。
ブタや羊、ヤギ、ロバのいななき、小鳥の軽快なトゥリルが加わると、
いろんな鳥たちが鳴きはじめ、もう一つ一つを聴き分けられない。
朝の光が行き渡る頃にはカルナバルもたけなわだ。
動物たちの歓迎を受けて昇る太陽を
木々も諸手を挙げて喜んでいるように感じた。


光にひきつけられて

村にいると灯りの大切さを思い出させられる。
電気があるから人は活動できるんだ、と実感する。
人間は万能かのように振舞うけれど
電気がなければ一気に「動物的」になる。


蛍光灯に集まる虫たちを見て、もっと離れたらいいのにばかだなぁなんて思うけど
自分だって全身を光に照らしていて
水族館の魚が井の中の蛙を嗤っているようなものだった。