DRH

先日、中心街にあるMoulin Rougeというお店に食べに行った。
"Salade DRH" (DRHサラダ)とあり、DRHとは何の略か店員に尋ねたところ
すかさず"Directeur de Ressources Humaines"(人事部長)と返ってきて笑ってしまった。
他に、DAF "Directeur des Affaires Financières"(財務部長)サラダというものもあった。
DRHサラダはどの辺が人事部なのかはわからなかったけど量がたっぷりでおいしかった。


似たような冗談で、以前ゼミの先生が"I am MBA"と言っていたのを思い出した。
"I am Married But Available"(既婚だけどフリー)または
"Married By Accident"(誤って結婚してしまった/できちゃった婚)だそうだ。


そのDRH、配属先で人事異動があり、マダムが新しくやってきた。
名前も顔も知らないまま数週間経っていたが、
昨日たまたま教員の給与体系のことで質問があって聞き回っていたところ、
このマダムがおしえてくれることになった。


彼女はいかにも聡明で無駄な言葉を一切使わず、
「子ども一人につき月に2000フラン手当がもらえて上限は6人まで。
じゃあ6人子どもがいたら何フランもらえる?」
とか説明しながらどんどん質問を混ぜてくるから全然気が抜けない。
できるだけ簡単な言葉を使って、逐一理解しているかチェックしながら説明してくれるから
すごくわかりやすくておもしろく、
最初はちょっと怖くてびくびくしてたけど、
説明が終わるころにはすっかり先生を慕う生徒の気持ちになった。



肝心の給与体系に話を戻すと、
日本でも公務員は職階給とか号俸といって何級職何号という給与区分があるそうだが(広辞苑情報)
ブルキナも複雑で、カテゴリがAからEの5段階あり、1〜3の階級と分かれていて、
各階級の中に10前後のレベルがあり、勤続年数により2年毎に上がっていく仕組みとなっている。


たとえば
 B1   B2
 300  260 
 330  290
 360  320
 ...   ...


というように等差数列の一覧表があり、カテゴリと階級、勤続年数から数値を見つけ、
その数値に2301という指数をかける。
 300×2301=690300 これが一年の基本給与額で
これを12で割った値に住居手当や移転手当(農村部の方が都市部より高い)、子どもの人数、クラス数(校長の場合)など
いろいろな手当を足し、年金積立金(月給の8%)を差し引くと月額の給与がわかる。


規則では300、330、360のように2年ごとに昇給することになっているが
実際には十年以上変わらない場合もあるようだ。
ちなみに2301という値は"valeur du point indiciaire"(号俸指数?)といい、
以前は2220だったが教員の賃上げストを受けて2012年1月1日に改定されたところだそう。


カテゴリと階級(職階)を上げるには所定の勤続年数と試験を通ることが必要で、
EからA、3から1と上がっていき、E3が最低、A1が最高となっている。
中卒で教員になるとC3となるが、
この階級はほぼ廃止され私立小学校にまだ残っている程度で
大抵は1〜2年の研修の後、教員試験をパスしてC1からスタートする。


最短で昇給した場合を計算してみると、
大体10万フラン(2万円)くらいからスタートして徐々に上がり、A3の校長になると17万フラン(4万円弱)、
最高レベルのA1の視学官(学校教育に関わる指導・助言をする校長より偉い人)で20万フランほど(4万円)となる。
視学官で最長の勤続年数、一番たくさん手当がもらえる場合を想定すると月に約45万フラン(9万円)のようだ。



なぜ私が給与体系を知りたかったかというと、
教員のアンケートの回答で要望の欄に「給料を上げてほしい」というような内容が多かったからだ。
それと、私立小学校の方が公立よりも教員の職階が低い場合が多いのだが、
教育の質が高いと思って私立に入学させた保護者は期待を裏切られることになり、
それが退学理由の一つとなり得る可能性はいないか、というのが私の問題意識の一つなのだ。


一般的に教員の給料が低いと、優秀な人材が集まりにくく、教員不足につながったり、
教員や視学官が復職のために職場に来なかったりと
教育の質に関する多くの問題の要因となっている。
合計特殊出産率が約6人と高く、人口増加し続けるブルキナで
無償ではないが義務教育を謳っているため生徒数は毎年増え、
学校数や教員数は慢性的に不足している。


外国からの援助は学校建設などの箱物よりも教育の中身へと重心が置かれるようになり、
地方分権化とともに保護者の学校運営への参加が求められているが
保護者にそうした意識、意欲はあるのか、また分担金を払うことに対してどう思っているのか
保護者と教員がそれぞれお互いにどういうことを求めているのか
こうした疑問を持ってアンケートの質問項目を作成した。


集計はまだ終わっていないが、
というか締切を一ヶ月以上過ぎた今もなお回収がまだ完全に終わっていないのだが、
教員は国と保護者に、保護者は国と教員に、それぞれが期待や不満を抱いている様子が少しずつ見えてきた。
ブルキナでたまに見かける、車が4台くらいロータリーの周りを囲んでぴたっと止まっていて
お互いに前の車が進まないと進めないという光景に似ていなくもないが
子どもの将来という共通目的のためにお互いに譲れる部分を譲り、協力していかなければならない。