CM

ブルキナでは、外食していると大抵、物売りの人たちが話しかけてくる。
私はこれを「CM」と呼ぶことにした。
話をしているのにお構いなしに来る物売りはけっこううっとうしく感じるけど、
テレビ番組でCMがちょくちょく入るように、
それくらいの感覚で対応すればいいのだ、と思うことにした。
（冷たい態度かもしれないが見下した態度をとっているつもりではない。）

ポケットティッシュやガム、タバコ、ケータイのプリペードカードの物売りは常にいる、
大きな道路だと交差点ごとにいるような、よくあるCM。
その他、卵、果物、パン、本や辞書、布や服、アクセサリー、カバンや小物入れなどの革製品、
おもちゃの類、枕、電化製品、絵やポストカード、伝統的（に見えるよう）な工芸品など、多種多様なCMがある。
クリスマスの時期にはサンタさんの風船やツリーのように季節限定のものもある。
みんな手や頭にいっぱい物を載せてくる。
ブラジャーをたくさん首からかけた男の人もブルキナでは変態じゃなくて普通の物売り。

ごはんを食べてるのにこんなタイミングで枕なんてほしいわけないじゃないかと思うけど、
実際に買った日本人もいるというから、
ダメ元でいってみて売れればラッキー、くらいの感覚なのだろうか。

先日のCMは二人組で、ポケットティッシュを売りに来た。
ティッシュは日本では買ったことがないけど、ブルキナでは一つ100フラン（20円）が相場。
少年Aがティッシュを「一つ100フラン」というと少年Bが横から「一つ50フラン！」といい、
Aが「100フラン！」といい、Bが「50フラン！」といい、
現地語で何かケンカをし始め、周りの大人に怒られてすごすごと帰って行った。
なんだったんだろうか。コント付きCMか。
あの少年Bは商売の邪魔しかしてないけど、なんかおもしろかったから一つ買った。

オフィスでもときどき布や果物のCMが入る。
働いているのを邪魔（という感覚はないのだろうけど）して
突然「バナナ」と一言だけいってバナナを突きつけてきたりする。
あぁ、日本のCMとの大きな違いはここで、愛想がない。ただただ強引。
先日、女性向けのドレスやらかつらやらを大量に持ってきた人がおり
オフィスに10人くらいのマダムが集まってしまい、
デパートのセール会場かっていう混みようでうるさすぎてまいった。
同じ部屋のムシューもお手上げでタバコを吸いに出て行ってしまった。

そんなCMに感化されたのか、オフィスで働くおばちゃんたちまで
「お菓子どう？」なんていって持ってくる人が増えた。
お菓子やピーナッツ、ジュース、水などを
たくさん作ってきて、または仕入れてきて売りさばいている。
公務員の給料は普通の人たちよりずっといいけど（警備員の5倍）、
それでも100円でも多く稼ぎたいのだろう。

『さおだけ屋はなぜ潰れないか？』だったか。前に読んだ新書で、
たしか、さおだけ屋は商品を倉庫に運ぶついでにテープを流しているだけだから
決して損をしない仕組みになっているって話だったけど（ネタバレして申し訳ない）
ブルキナのCMはそんな計算はしていない。
釣り針にエサをつけてじっとしていても、
わざわざ食いつきにきてくれるほど積極的な魚は少ないから、
魚を探し回ってエサを鼻先にくっつけて、
これでもだめか、食いつかないかといってまわっているんだろう。

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貧困層をビジネスの対象とするBOPビジネスが注目されているけど
なんとなく雲霞のようなイメージで、一つ一つは本当に小さい。
私がしたいと思っているマイクロファイナンスは
こういう人たち（といっても主に女性）を対象としている。

CMのスポンサーになるべきなのか（マイクロファイナンス）、
CMをする必要をなくすことの方をすべきなのか（教育）。

マイクロファイナンスは対象が狭いが効果が直接的でわかりやすい。
女性を対象にしてその子どもへの影響を考えたら、対症療法と言い切れない気がする。

教育は対象が広く、大きなアプローチだけど結果が出るまでの期間が長く、効果も測りにくい。
おかゆを食べさせて風邪を治そうとしているような、風邪薬のように直接的ではないイメージがある。

理想的には両方すべきなのかな。
よくわからないけど、自分の体は一つしかないからどちらかにした方がいいと思う。
どちらをしたいかによって将来の方向性が変わるから
就職先、インターン先、勉強内容とそれまでのステップも大きく変わってしまう。
まだ決めかねているけど、CMをなくすのを目指してみようかな。