日本にて

治安が悪化し、急遽日本に帰ることが決まった。


風邪でしんどい体に鞭を打って荷造りや挨拶まわりをし、

最悪戻ってこれなくなっても困らないように手筈をし、

一年過ごしたブルキナファソに別れを告げ

あっけなく東京に着いてしまった。



見るものすべてが整っていて清潔で寂しい。


一年前までは普通だったけど今はいろいろなものに違和感を感じる。
道行く人とあいさつをしないし、握手もまずないし
店の人が強引に物を売り付けてこないし
アスファルトの道路しかないし
漢字が目にうるさいし
コンビニで売ってる物が高級品に見えるし



家に帰ると、おばあちゃんが小さくなっていたり頭がますます白くなっていたり
犬がたぬきのように丸くなっていたり
猫があまりにもころころ、ふかふかで毛皮を着ているように見えたり
家族がやせていたり太っていたり
電卓が燃えるごみになっていたり


驚くことも多かったけれど、案外簡単になじんで
食べるもの全部がおいしいし
インターネットは早いし
フィギュアスケートはきれいだし
お風呂は気持ちいいし
快適、快適なんていって一週間が過ぎてしまった。



けれど


砂埃に文句を言っていたブルキナの赤土の道を歩きたい
うるさいくらいの道端の人たちもなつかしい
きたない市場のおばちゃんたちに会いたい
職場の人たちと無駄話がしたい
焼きたてのフランスパンと近所のヨーグルトが食べたい
鶏の鳴き声が聞きたいし犬に会いたい
すっかり友達、というか家族のような存在のガードマンたちの顔が見たい



何が大切か考えて、できるときにすべきことをする、
そうやってシンプルに生きることを学んだ。
誘惑の多い日本だけれど、それを忘れないようにしたい。
ブルキナで、大切なものを見つけたのだから。



Je mets une virgule à ma vie au Burkina,
mais ce n'est pas encore le point final.
まだピリオドは打たない。