如水

先日、元気がない私を励まそうと思ってか、
ブルキナ人の親友がブルキナ料理をふるまってくれて、
食べながらブルキナ対エジプトのサッカーの試合を見た。
「17歳以下」と言われても「本当に?」と何度も聞き返してしまうような
大きくて顔の濃い選手の多いエジプトを相手にブルキナは4対0で快勝した。
(後日ルワンダと決勝を争い、初優勝を飾った。)


点を入れるたびに「メルシー!」と大声で叫んで椅子から飛び上がる彼は24歳、私と同い年だ。
3月から大学生になって法律を勉強する。
すごく礼儀正しくて誠実な彼とはいろんな話をする。
友達として率直に意見を言ってくれる。


彼は学費を稼がないといけなかったため高校を卒業するのに人より時間がかかった。
大学の学費は年齢制限のせいで国からの補助が受けられないし
両親には頼れない事情があって一人暮らしをしてすべて自分でなんとかしていかなければならない。
今まで稼いだお金でこれから何年かの学費や生活費をまかなっていかねばならないため
少しでも節約しようとして朝昼を抜いて一日一食しか食べなかったり、
将来のことを考えると不安で夜眠れなくなったり頭痛がして痩せてしまうという。



同じ24歳。「生まれる場所が選べたら」どころではなく、
「人生がこんなに苦しいものだと知っていたら生まれてこなかった」とまでいうことがある。
それでも「自分は男だから、将来子どもと奥さんを苦しませるのは嫌だから今苦しまないといけないんだ」
「疲れることを避けていたら成功しない」
と言って働きながら勉強している。
1日3時間睡眠で3ヶ月勉強して去年ようやく高校卒業資格を得た。
これから7年、努力を続けても成功しなかったらヨーロッパに渡るという。
途中、船で捕まったり死んでしまったとしてもこのまま苦しむよりましだ、と。



私の悩みなんて彼にとっては甘っちょろいものだろうに、
何か相談すると真摯にアドバイスをしてくれる。
この間落ち込んでいたらバナナを1房買ってきてくれた。
1食か2食分のお金になるのに。自分は朝昼食べてないのに。



バケツの水をこぼして「見ろ」という。
「これが人生だ。行き着くところまで流れて行って止まる。」
良いことも悪いことも起こるがすべて受け入れるしかない、ということか。



今日は逆に彼が落ち込んでボーっとしていたから
バケツに水を入れて庭に落ちていた花びらを浮かべてあげた。
女性が男性に花をあげるのは誤解をまねくよ、と笑いながら彼は受け取った。