嫌われ松子の一生

先日、自転車でリアカーにぶつかって転んで腰を打ってしまい、
歩けるし、立ち続ける、座り続けるのはできるけど
立ったり座ったり、くしゃみをしたり、蚊をパチンとしたりすると痛い。
しゃがむようなトイレには行けないし出かけるのには不安があるので
年末に集まってわいわいするつもりだったのにキャンセルした。



痛み止めを飲むとあまり痛みを感じなくなったので本を読むことにした。



『嫌われ松子の一生』山田宗樹


上巻の半分くらいを読んでやめようかと思った。
サクセスストーリーの対極、少し期待を抱いては裏切られ、
スキー場で上に登ろうとするのに、
踏ん張ってはどんどん下に滑り落ちていってしまうようなかんじがした。



読み終わると、たくさんの付箋が残った。
この間ジェフリー・アーチャーを読んだ時には一つか二つしか付箋をしなかったのに。
私は本を読むとき、印象に残ったセリフ、教訓が引き出せるところ、
なんとなく気になったところに付箋をして、
読み終わったあとにノートに書き写すことにしている。




「わかったでしょ。わたしは、男から男へ、流されるように生きて、
人殺しまで犯して、結局、何ひとつ手にできなかったのよ。
残ったものは、美容師の資格だけ。二中にいたころとは、違うのよ」


鬼束ちひろのSweet Rosemaryの歌詞を思い出した。
「ヒッチハイクのように 愛を獲得して 
口笛をふいて 町から町へ 町から町へ 涙をこらえて」
こんなに美しくはないけれど。



「やはりわたしは、おかしいのだろうか。自己中心的?
場当たり的?狭い視野でしか対人関係を築けない?
ほんとうにそうなのだろうか。欠陥人間なのだろうか。
思いやりのない人間なのだろうか。人間失格?
そうかも知れない。もう、どうだっていいけど。」


これほど激しくはないけど、そういう思いにかられるときがある。
人を好きになるとか結婚ってなんなんだろう。
気が合ったり何かの条件を満たすってこと?我慢ができること?愛着?
よく、わからない。



「夢には捨て時がある。夢を捨てられたとき、はじめて大人になれる。
そんな文章を、読んだことがある。嘘だよな、と思う。」


最初はチャラチャラしたことしか言わなかった主人公の笙が終盤に頭の中でつぶやいたセリフ。
なんとなく低く響いて余韻が残った。


「生きている以上、予想もしなかった出来事に、
数多く遭遇することになるのだろう。」

リアカーとかね。