私小説と英雄譚

同期の仲間の一人、通称「パパ」と小説について話した。


パパおすすめの小説、車谷長吉の短編集『塩壷の匙』を読んだところ全く理解できず、
私には合わないようですといって返し、お礼に『竜馬がゆく』を貸した。


『竜馬がゆく』を、私はこうありたい、こういう人物がすばらしいと思って、
いわばアイドルをおっかけているような気持ちで読んだ。


「普通の人」にスポットライトを当てる泥くさい、人間くさい私小説を好む人にとって
『竜馬がゆく』はどうなんだろう。


『塩壷の匙』に、上京した孫が田舎に帰ってくるために
縁談をまとめたいと思っているおばあさんが
気が利かない嫁に憤りながら炎天下歩いているというような話があった。


このおばあさんにとっての縁談は竜馬にとっての薩長同盟くらい大きなものだろうし、
気が利かない嫁も新撰組くらい自分を脅かす存在なのだろう。



ところで、私はポッドキャストが好きで
通勤中にフランス語学習用のもの、休憩中に他愛のない雑談のものを聞く。


パパにも雑談のポッドキャストを
「たまに食べる和菓子みたいでいいですよ」とおすすめしておいた。
栄養にならないものだけれど甘くてほっとする。


『塩壷の匙』は、みょうがとか百合根とかの独特な味わいで
読む人自身がそれを使って料理しないといけない気がする。


『竜馬がゆく』は何かな。幕の内弁当かな。
起承転結、一通り揃ってて満足感がある。
ステーキやファストフードが食べたい人にとってはだめだけど。


普段の食に関してもそうだけど
まぁ、「バランス」かな。