パパ・ユーアクレイジー

『パパ・ユーアクレイジー』 W. サローヤン 伊丹十三訳


食べ物の話をよくし、主人公がむしゃむしゃ食べるところを想像するせいか
読んでいると無性に何か食べたくなるから夕ご飯を食べる時に読む本としていた。


訳者があとがきで述べているように
「原文の人称代名詞を可能な限り省略しない」というルールを課して訳したため、


「僕の父は僕の母に、彼女が僕と僕の父を彼女の車で送ることを断った」


というような非常に読みにくい文章になっているが、
つまりは英語の感覚で読んでもらうためにしたことであって、
そう思って読めば苦にならなかった。

というより、多少不自然な日本語の方がむしろ「10歳の僕」という主人公にぴったりでいいのだと思った。



『星の王子さま』を彷彿とさせるような小説で、
豊かな感受性を持つ子どもの目線から、美しい言葉で
今はすっかり慣れてしまったり忘れてしまったような
日常に隠れているいろいろな「真理」を大切に伝えてくれる。

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僕の父は時時僕が彼に胎を立てることを知っている。いや、時にはほとんど憎むことすらあるのを知っている。
彼自身が僕にそういったんだ。僕は自分だけの秘密のつもりだったのに。

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「雑草はずいぶんひどい罰を受けている」僕の父はいった。「でも、ちょっと背を向けると、もう生えている。
いつものように、静かに、取るに足らぬ風情で、誇らず、尊大ぶらず、自分が攻撃された回数など気にもかけずに生えているんだ。実に何度眺めても美しいものなのさ」

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クリスマスの次の日は変な工合だった。なぜかというと、それがクリスマスの次の日だったからだ。
誰もがクリスマスにあまりにも期待してしまう。だからクリスマスが過ぎてしまうと、とまどってしまうのだ。