農村

語学研修が始まって一週間、村の暮らしを見るという目的でレナという村に行った。


ボボ・デュラッソから55キロ余り、とても自力では戻れないような、入り組んだ未舗装の道を進み、家がポツポツと点在する村の入り口を抜けると、開けた場所に大勢の子どもたちがいて、車に向かって手を振ってきた。

村の小学校らしく、手を振り返すと子どもたちは歓声をあげた。


ホームステイ先は医者の家ということで、塀で囲まれた、広くて小奇麗だった。どうやら村で一番いい家のようだった。


本音をいうと、来たくなかった。電気も水道もないから、暑くてたまらないだろうし、言葉にも自信がなかった。言葉なしでコミュニケーションがとれるほど外交的な性格じゃないし、村に近づくにつれ憂鬱さは増していった。


出迎えてくれたのは50代後半か60歳くらいの女性で、会うやいなや笑顔で手をつないできた。不思議なもので、いくら言葉で「大丈夫だよ」と言われようとも、手のぬくもりから伝わる安心感にはかなわないだろう。


とりあえずほっとして、与えられた部屋のベッドに腰を落ち着けた。