イス

フランス語を勉強し始めて三ヶ月余り、まだまだチンプンカンプンで、家の人が現地語を話しているのかフランス語を話しているのかさえわからない。


目を見てゆっくり言ってくれるとき以外、何の話をしているのか見当もつかないから、イスに座って話を聞いているうちに自分がイスの一部になったような、元々イスの中にいたのではなかったかという気さえしてくる。


私が自分を異質であると感じているのに、そんなことはお構いなしに、彼らは彼らの生活をごく普通に続ける。


ときどき警戒して唸ってくる犬にのみ、私は自分の存在を確認する。