ロバ


街中でも村でも、たくさんロバを見た。

みな、どこかおびえ、つつましく人間に従い、鞭で打たれて重い荷物を運んでいた。


綱がついていないときでさえ、ロバは逃げようとせず、藁葺き屋根の下に佇んでいる姿はかわいそうで、


どうして彼らは鞭を打たれる側なのだろう、なぜ一生人間のために働かないといけないのだろうと思った。


鞭を打たれても全く鳴かないので、ロバは鳴かない生き物だと思っていた。


突然、藁葺き屋根の下から大きな鳴き声が聞こえた。


それは、いかにも悲しげな、大の大人が声を上げて泣いているような、胸を打つ鳴き声だった。